生命保険 相談への理解
損害額の全額の保険金は支払われず、支払保険金=損害額×(保険金額/保険価額)ということになりますので、注意が必要です。
これを比例てん補といいます。
例えば、保険価額三〇〇〇万円の建物に、保険金額二〇〇〇万円の保険を付け、一五〇〇万円の損害が生じた場合の支払保険金は、一五〇〇万円×(二〇〇〇万円/三〇〇〇万円)=一〇〇〇万円になります。
逆に保険金額が保険価額を上回っている場合がまれにありますが、これを「超過保険」といいます。
損害保険の目的はあくまでも損失額の補償であって、保険金が支払われることによって利益を得ることは許されません。
これを「利得禁止の原則」といいますが、保険による利得を禁止するために超過保険の超過部分は無効とされており、保険金は実際損害額の範囲でしか支払われません。
更に、一つの保険の目的について、被保険利益・保険事故が同じで、保険期間も重なるような複数の保険契約が併存するケースがあります。
これを重複保険といいます。
保険金額の合計が保険価額を超過した場合には超過保険と同じ扱いになります。
この場合、各損害保険会社が保険金額の割合により損害額を分担することになります。
なお、一部保険において比例てん補の適用を行わず保険金額を限度として損害額を全額てん補する契約もありますが、これを実損てん補保険といいます。
以上、損害保険の仕組みを簡単に説明しました。
損害保険はリスクに対応するための有効な手段でありますが、必ずしもあらゆるリスクに対応できるわけではありません。
損害保険には幾つかの要件があります。
損害保険は大数の法則に基づいている制度ですが、大数の法則が成立するような多数の保険契約者の存在が損害保険成立の要件になります。
同種同質のリスクに対する保険契約者が少数の場合、損害保険は成立しません。
先ほどの火災保険のケースで、契約者が二、三〇人集まっただけでは、実際に事故が発生した場合、一〇〇〇万円の損害の分担が不可能になります。
同種同質のリスクに対する保険契約者が多数の場合でも、事故が多数の保険契約者に同時に発生し、大きな損害をもたらすような可能性があり、損害保険会社のリスクに耐えうる許容力を超えるようなケースでは、損害保険は成立しません。
例えば、地震、広域公害、戦争などのリスクが発生した場合、その損害は一時に巨額になるおそれがあり、損害保険会社の経営上負担が大きすぎることになります。
更に、損害保険の対象となるリスクは経済的な金額が客観的に測定できることが前提になります。
したがって、精神的・情緒的・心理的な苦痛のような経済的損害以外の損害は客観的な測定ができないので保険の対象にならず、例えば、どんなに思いがこもっている親の遺品などに損害保険をかけていても、通常の市場価格以上の保険金は支払われませんし、ラブレターなども保険の対象になり得ないわけです。
また損害保険会社は、過去の統計・トレントなどから将来の事故発生頻度・確率を予測・見積りを行い保険料を算出しますが、それができない種類のリスクに対しても損害保険は成立しません。
例えば、技術革新や流行の変遷に伴う陳腐化のリスクなどは、リスクの金額どころかいつ起こるかすら予測困難で、保険の対象にはなりません。
なお、当然のことながら、公序良俗に反するような保険は成立しえません。
例えば、賭博で負けた損失に対する保険や、自動車のスピード違反の罰金を補償するような保険は成立しません。
世の中には、保険と似て非なる制度が幾つか存在しています。
以下それらを見ていきましょう。
貯蓄の大きな目的の一つが、保険と同じく将来の危険に備えるにあることは、共通の認識でしょう。
しかし、貯蓄は一人でもできますが、保険は多数の保険契約者の存在が前提になりますし、貯蓄は危険発生時以外の自由な使途が認められますが、保険金の支払いは事故発生時に限られます。
しばしば、「貯蓄は三角、保険は四始期角」と言われます。
貯蓄は、蓄積した元金に利息を加えた額しか利用できませんが、保険は保険契約と同時に一定の保険金額相当額の補償が得られます。
一方、貯蓄は目標達成以前に事故が発生すれば必要金額を確保することはできません。
また、交通事故の損害賠償金のように何千万円、あるいは億円単位の金額を貯蓄でまかなうのは現実的ではありませんから、リスク対応手段としては保険の方が断然優れているといえましょう。
主たる債務者が債務不履行の場合に、これに代わって保証人が債務を履行する責任を負うことを保証といいます。
保証には債務保証の他、身元保証、品質保証などもありますが、いずれも保証人ど非保証人のみの関係で、多数の契約者の参加を前提にしていない点で保険とは異なります。
しかし、個別の保証では保険にはならないこうした行為も、リスク集団が多数になれば保険の対象になります。
住宅ローンを対象にする保証保険、身元保証に代わる信用保険などがこれにあたります。
最近ではデリバティブや資産担保証券(ABS)に対する保証も盛んになってきており、今後保証分野の需要はますます盛んになることが見込まれています。
多数の拠出者によるファンドを、偶然の事実によって少数の者に分配するという点で、賭博・富くじと保険とはI見似ていますが、賭博・富くじは、利益を得る目的であるのに対して、保険は被った損害に対して現状回復するのが目的ですから、目的と機能において両者は完全に異なります。
多数の工場を持つメーカーや、多数の船舶を所有する海運会社、多数の車両を有する陸運会社等が、自社の中に保険料相当額を積み立てて、事故の場合の資金に充当することがあります。
これを自家保険といいますが、企業内の準備金制度であり、本質は貯蓄の一類型に他ならず、保険という名はついていますが、実態は保険とは全く異なります。
近年、メーカーなどの企業集団が、その傘下にキャプティブといわれる保険専門会社を設立し、グループ内企業や団体のリスクを引き受けることがあります。
キャプティブはバミューダのような税制上有利な場所に設立されることが多いようです。
形式上は多くのグループ内企業・団体というリスク集団があり保険の形はとっていますが、実態は自家保険の一種ということができるでしょう。
特定の職場や特定の地域で働く人で構成する団体が、構成員の福利厚生、経済的安定向上を名目として、死亡、傷害、交通事故、火災等の際に一定の給付を行う相互扶助事業を営むことが、日本では広く行われています。
共済を行う主体としては、農業協同組合法に基づく全国共済農業協同組合連合会(全共連)、消費生活協同組合法に基づく全国労働者共済生活協同組合連合会(全労済)といった規模の大きいものから、任意団体が行うものまでまちまちで、根拠法も所管官庁もバラバラです。
共済は保険に比較して次のような特徴があります。
・共済の加入者・構成員は地域・職域に限定されている・保険金に相当する共済金は見舞金的な色彩が強い・募集組織を有しないものも多い共済は、保険とは一線を画しているといわれてはいますが、極めて安価な会費で加入できる組合も多く、規模的に見ても、その実態は何ら保険と変わるところはないものが多いことも指摘されています。
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